歯周病とは、文字通り歯の周りの病気で、歯槽膿漏とも呼ばれています。歯がなくなってしまう一番の原因となっており、日本人ではその約50%がこれによるといわれています。最近では、生活習慣病のひとつに数えられています。

歯周病チェックリスト

下記にリストに1つでもチェックが入ったら要注意! 歯科医師に相談しましょう。

  • 歯茎から血が出る
  • 歯がぐらつく気がする
  • 起きたとき口の中が粘つく
  • 口臭が気になる
  • 歯茎が赤くはれる
  • 歯茎が時々痛む
  • 冷たいものが歯にしみる
  • 歯茎を押すと膿が出る
  • 歯茎がむずむずする
  • 歯と歯の間に物がよく挟まる(爪楊枝が手離せない)
  • 歯茎が下がった気がする

歯周病の原因

1.口腔内における歯周病菌の蔓延
2.口腔内の不衛生
3.歯石の蓄積

上記の3つの原因の根本はすべて歯周病菌にあるのですが、その歯周病菌には、1.酸素を嫌う、2.歯と歯茎の間に深く住みつく、3.毒素を出して歯の周りの骨を溶かす、という性質があります。その結果、歯が抜けてしまうのです。

感染経路

生まれたての赤ん坊の口腔内には歯周病菌は存在しません。大きくなるにつれ下記のような感染経路を経て、歯周病菌保持者となるのです。

1.箸やスプーンの使い回し/キスやコップの回し飲みによる接触感染
2.くしゃみ、せき等の飛沫感染


現代の世の中、感染経路を断つのは不可能に近いので、感染経路には気をつけつつ、予防と治療に励みましょう。

予防と治療

  • 正しい歯磨き(入れ歯洗いも忘れずに!)
  • 歯石取りなどのプラークコントロール
  • 悪い歯茎の除去
  • 歯周病菌の種類と数のチェック(位相差顕微鏡による)
    ※位相差顕微鏡(いそうさけんびきょう)=細菌やカビの細胞を生きたまま観察できる顕微鏡
  • 口腔内の細菌に合った薬の服用
  • 禁煙

生活習慣病と言われるわけは?

歯周病が生活習慣病のひとつに挙げられ、全身病といわれるには理由があります。

1. 口腔内のカビが肺へ入り誤嚥性肺炎を引き起こす
2. 歯茎の出血が血管から心臓へ入り心臓病の原因となる
3. 食道がん、糖尿病、高血圧、早産にも関与しているといわれている


すべての病気が口から(!)とならないためにも、日々の口腔ケアは手を抜かず、その上で、再発予防と治療は万全にしておきたいものですね。
しかし、素人診断は怪我の元。口の中の感じがいつもと違うな(?)と思ったら歯科医師に相談しましょう。

光殺菌療法

歯周病PDT治療 ペリオウェイブ

ペリオウェイブとはPDT(photo dynamic therapy(光線力学療法))を用い歯周病の原因となる細菌を破壊する新たな療法です。このPDTはさまざまな医療分野ですでに利用されている医学的療法なので安心して利用していただけると思います。

PDT療法について

PDT療法とはphoto dynamic therapyの略、日本語でいうところの光線力学的療法です。この療法は患部にレーザーを当てて細菌を破壊する療法です。歯科ではまだ新しくなじみのない治療法かもしれませんが、医科の分野では20年以上も前から癌・皮膚・眼科などで幅広く使用されていた医学的療法です。

PDT療法の仕組み

レーザーと言っても高熱で痛みを伴うレーザーとは異なります。光を吸収すると化学反応を起こし活性酸素を大量に発生させます。その光となるレーザーを使う治療法なのです。つまり、細菌、腫瘍などに光感受性物質を含ませ、そこにレーザーを照射し、腫瘍・細菌などのみを治療することが可能になるといった方法です。

PDTの医学的利用範囲

・癌治療における利用
癌治療の分野では主に肺癌などの主に早期の中心型肺癌の治療に使われます。
日本ではフォトフリン、レザフィリンといった癌の腫瘍組織に取り込まれやすい腫瘍親和性光感受性物質が光感受性物質として使われます。その後、気管支鏡という細い内視鏡を気管支に投入し、その気管支鏡を介してレーザーを癌の腫瘍の部位に照射するという治療が行われます。
このため、癌の治療においてのPDTの利用はレーザーの照射ができる範囲の早期の小さな腫瘍、また内視鏡が通せる範囲の癌の治療のみとなっていますが、体内器官を切断せずに、早期の癌であれば完治できる治療法として大きなメリットを持った癌治療といわれています。

・皮膚科における利用
癌の治療のための研究のなかアミノレプリン酸という光感受性物質が皮膚の皮脂腺に取り込まれやすいことが発見されたことがきっかけで、皮膚科ではニキビの治療などにこのPDTが使われるようになりました。
アミノレプリン酸は皮脂腺に取り込まれポルフィリンという物質を作り出します。このポルフィリンにレーザーの光を当てると皮脂分泌機能が抑制されるようになります。そして、皮脂の分泌が減ることによってニキビ菌などの細菌を減らすことによって皮膚のトラブルを治療する方法が皮膚科でのPDTの利用です。

・眼科における利用
癌かでは加齢黄斑変性症という加齢などの原因により黄斑という距離・立体・色・大きさなどの視力をつかさどる部分の機能が新生血管という異常血管の発症による出血やむくみにより低下する症状の治療のために使用されます。
この症状にはペルテポルフィン、ビスダインという光感受性物質を注射し、視力低下の原因となる新生血管を閉塞、縮小するといった治療法です。

歯科における利用 ~ペリオウェイブ・システム~

歯科では歯周病の治療としてペリオウェイブという手法が用いられます。

バイオジェル

ペリオウェイブの治療にはまずメチレンブルーを主成分としたバイオジェルを光感受性物質として使用します。この染色液はリボ多糖類とリピドというグラム陰性菌・陽性菌のなかにある成分と結合するもので、なかでも歯周病の原因となるグラム陰性菌にいち早く取り込まれるものです。

ペリオウェイブのレーザー

ペリオウェイブで用いられる非熱ダイオード・レーザーはメチレンブルーを主成分とするバイオジェルの周波数に反応します。

光感受性物質とレーザー光による化学反応により殺菌

レーザーの発した光は染色液の周りにある酸素分子を細菌の細胞壁に対して毒性のある遊離基に変換させます。この遊離基が細菌を破壊します。このような化学反応によって歯周病の原因となる細菌が破壊され、歯周病の治療が完了するのです。

ペリオウェイブとは

旧来の治療

旧来歯周病には口腔衛生指導、歯周強化、スケーリング、ルート・プレイニング、虫歯などの局部的刺激因子治療、それに付随した抗生物質の処方、さらにはひどくなると外科的治療が行われてきました。
これらはれっきとした歯周病への効果があると認められた治療ですが、デメリットもありました。まずは、多くの治療では歯周病の原因となる細菌を完全に排除することは難しかったということです。
そして、抗生物質の繰り返しの処方は薬に対する耐性を生み抗生物質などの有効性が減少してしまうことです。

ペリオウェイブの特徴

ペリオウェイブは歯周病の原因となるグラム陰性菌をレーザーによって破壊することで歯周病を治療します。この治療の特徴はまた薬品などを使わないものなので副作用はなく、歯一本につき約60秒の治療という短時間での治療が可能です。また、インプラントや矯正中の歯周病治療、歯周手術中、再生治療前、器具操作が困難な治療の際にぴったりな療法などペリオウェイブの特徴は多くあります。

抗生物質を用いない治療

最大の特徴としては抗生物質を用いない治療法というところです。旧来、歯周病の治療には抗生物質を用いたものが多くありましたが、抗生物質を使った治療は繰り返すうちに抗生物質に対する抗体ができてしまい薬に対する有効性が減少してしまうという問題がありました。しかし、ペリオウェイブの治療では抗生物質を用いないためこの問題点が解決されることになります。

痛みを伴わない治療

また、もう一つの大きな特徴としては痛みを感じずに治療ができるということです。レーザー治療と聞くと高温で痛みを伴うものを想像される方も多いかと思いますが、ペリオウェイブのレーザーは低温で、歯周病の原因となる細菌と歯周病による組織破壊の原因となる毒素以外にはダメージを与えない治療法なので痛みは感じないものとなっています。

ペリオウェイブの効果

ペリオウェイブの効果は、年齢、喫煙の有無、患者様の健康状態により人それぞれ異なるものとなっておりますが、出血、歯茎などの組織の状態、痛みへの効果は治療後の早いうちに見られます。炎症への効果は治療後1~2週間、歯茎などの奥の組織への効果は数か月後に見られます。また、これらの効果は最初の治療後3~6週間後に再度治療を行うことによって高められるものであり、患者様によっては2度目の治療をお勧めする場合もございます。

旧来の治療との併用

ペリオウェイブは旧来から行われているSRP(スケーリング、ルート・プレイニング)などの治療法に対抗するものではなく併用することによってより効果を発揮する治療法です。
逆に、これらの治療が不十分で完璧に歯石を取り除くことができなければ、ペリオウェイブでもその効果を期待することができません。

ペリオウェイブの安全性

ペリオウェイブで用いられるPDT(光線力学的療法)は癌治療、眼科治療などで保険適用治療として正式に用いられている治療法なので安全性は保障された治療法となっています。
患者様の中には光感受性物質の影響により治療後しばらく患部の近くに青みが残るという報告はありますが、これは身体に害のあるものではなくしばらくすれば消えるものです。
また治療後の制約なども特になく、再発を防ぐため歯のケアをしっかり行っていただくこと以外は普段通りに生活を送っていただけます。

治療の流れ

ペリオウェイブは短時間の治療で歯周ポケットにある細菌を撲滅する痛みのない治療法です。ここでは、実際の流れをご説明いたします。

STEP1

歯周ポケットには細菌が存在する状態です。
SRP(スケーリング、ルート・プレイニング)により、歯周ポケット内部に入り込んだ歯石を除去します。

STEP2

光感受性物質としてメチレンブルーを主成分としたバイオジェルといわれる染色液を歯周ポケットに注入します。このバイオジェルはたとえ飲み込んでも人体に害はありません。

STEP3

無熱ダイオードレーザーで、患部を60秒ほど照射し、活性酸素を発生させて細菌を殺菌します。

STEP4

死滅した細菌を丁寧に洗浄します。

レーザーの照射により、バイオジェルが化学反応を起こし染色液の周りにある酸素分子を細菌の細胞壁に対して毒性のある遊離基に変換させます。この遊離基が細菌を破壊します。
このような化学反応により、歯周病の原因となる病原菌は撲滅し、毒性物質と炎症性分子は不活性化することになります。